高低

2004年4月30日 雑感・所感
 さんさんとお日さまが輝き、部屋の埃がキラキラと光る中で惰眠を貪っていた正午頃、うちのが電話してきやがった。心地良い眠りは携帯電話の「りんごの泪」に掻き消された。チッ。用件は、うちのの友人から借りているビデオを近所のレンタルビデオ屋でダビングしてこい・うちのが帰省するのにまだ飛行機のチケットが取れるかどうか調べてくれ・草食を散歩に連れてけ。出なければ良かった。私にとって快を齎す依頼事がひとつもない。全部どれもひとつ残らず面倒だ。普段なら、ハイハイ、と生返事をして2度寝に入れるのに、今日はそのまま目が覚めてしまった。ぼけーっとしてから、生協に請求額の確認電話をし、勤労者の方々の邪魔にならないよう昼休み時間を過ぎてから出かけた。草食を小屋から出してキャリーに入れ、トートに被ダビング用ビデオを入れ、郵便局に行って口座に引き落とし用の金を入れ、レンタルビデオ屋にダビングを頼みに行き、コンビニに寄ってお茶2本とシュークリームを買い、近くの原っぱで草食を放った。お茶を2本も買う破目になったのは、私のお宝携帯灰皿を家に忘れたからである。今日は暖か過ぎたのか、草食は原っぱではなくタイルの上や塀の影にばかり行きたがって詰まらなかった。家でもできることを外でしなくてもいいではないか。草食を持って原っぱの真ん中辺りに連れて行って放す。草、食い捲り。そしていつの間にかまたタイルや陰へ。こう、飛んだり跳ねたりして欲しいのだが。道行く人々が草食を見る。今日も数人に声をかけられた。それはいい。いいけれど、慣れてますか? と訊かれるのはちとつらい。飼い主として下を向いて、慣れていません……、と答えねばならぬ。また、触っていいですか? にも、噛むかもしれませんが……、と。そういうのもひっくるめて草食の個性だ。解ってはいるのに見栄張りな私は、もう甘えっ子でして、とか、撫でると喜びますよ、なんて言ってみたかったりする。

 途中、その原っぱの掃除屋のオッサンに声をかけられた。オッサンは、ここに草食が50匹くらいいればいいのに、と言っていた。そのココロは、草毟りをしなくていいから。オッサンが言うことには、その原っぱには除草剤などは撒いていないらしい。草食を放つにあたり、一番気になっていたことが解って良かった。ぼけーっとベンチで寝っ転がったり、軽くストレッチしてみたり、一服したりで約1時間半も経っていた。空が曇ってきて草食がだらーんと伸びたところで再びキャリーに入れて帰宅。帰宅しても直ぐにケージには戻せない。未だにトイレを覚えない莫迦ちんなので、出掛けに気付いたケージ内の床のしっこの処理をしなければならない。しっこをティッシュで拭き取ればいいだけ……なのに。何をとち狂ったか、私はケージ内全掃除を始めてしまった。中を全掃除すれば今度はその周辺の汚さが気になりだした。周辺が綺麗になればまたその周辺が……と、キッチンから居間迄掃除。雑食の爪とぎも裏返して新品同様にしたり、玄関やキッチンのマットの下に滑り止めを敷いたり。布団にコロコロもかけた。換気も万全。ネットで飛行機の空席を調べてうちのにメール。そして3日程干しっ放しになっていた洗濯物を畳んで収納。普段の一週間分働いた気分。

 当然疲れる。疲れたときや何かをしなければならないのにしたくないとき、私が逃避するのはマインスイーパだ。延々何時間でもできる。その昔、仕事に行きたくなくてトイレに行くのも忘れて12時間ぶっ通しでしていたこともある。で、ぼーっとマインスイーパに没頭していたところに、レンタルビデオ屋からダビング終了の電話が。面倒だ。激しく面倒。もう外に出たくない。このレンタルビデオ屋は深夜迄営業している。うちのの帰宅のときに取りに行ってもらおうか、と考えた。が、やめた。また愚痴愚痴と言われることが解っている。それにダビング料金が後払いなので、そのことでもまたぶつぶつと寝る迄文句を言われそうだ。疲れているときにうだうだとしょーもないことを言われ続けるのはしんどい。この間、やっとそのことに気付いた。よく私はうちのに、テンション高過ぎ、と言われる。出勤時、うちのはひとりで出掛ける。私は寝ている。平日に会うのは夜中だけ。だからテンションが高いのも夜中だ。何故テンションが高いのか。ヒキなので日中に話し相手がいない。因ってうちのが帰宅すると嬉しくて、しょーもないことでもいろいろと一所懸命に喋ってしまっているらしい。ときとしてそれは、かなり鬱陶しいようだ。何度か注意はされていた。でも。だって私は昼間ずーっと黙ってて詰まらないんだもん! で態度を余り改めなかった。改めるのは、相当にうちのが疲れているなり具合が悪いなりと判断できたときのみだった。ここ数日はお喋りを自粛気味。

 祖母の見舞いから帰った私は心身共に疲れ果てて、かなり具合が悪かった。そんなとき、珍しくうちのがテンション高く話をしていた。私は頷いたりするのもしんどい。嗚呼、今迄すまなんだ。私が悪かった。自分がだるいときに相手がハイテンションなのは、こんなにも堪えるものだったのか。もう平謝りである。ごめん、私が悪かった、頼むから静かにしてくれ。頷きを繰り返すだけでも頭痛がするのだ。口をつくのは全て生返事。過去、うちのの生返事っぷりに腹を立てていた私だが、もう平日はなるべく怒るまいと決意した。ローテンションのときは、ハイテンションな相手に文句を言う気力もなかったりする。ハイテンションな方はローテンションな相手に不満を持つ。テンションの高低がこうもお互いにストレスを与えていたとは、ちょっとした驚きだった。これに今迄私が気付けなかったのは問題点が、テンション、だったからだろう。これがテンションではなく、欲求、だと非常に解り易い。食欲・性欲など。睡眠欲は……まあ不眠過眠持ちなので勘弁願うとして、食欲・性欲の高低もうちのと私は合わない。譲り合っていかなきゃだなあ、と考え出した今日この頃。譲り合う、は間違いか。譲らなければ、だ。高い方が低い方に。テンションについては熟知しているうちの、食欲・性欲を私のローに合わせてはくれまいか。今でもかなり合わせてくれているのかな? どうだろう。イマイチ客観視できていないかもしれない。余談。うちのは寝言が多い。昨日の寝言が面白かったので覚書。寝るから! あんた、もう寝てますがな。

BGM/アルバム「羅生門」

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