現在3月18日。

 過去、何度となく牛や豚でカレーを作ってきた。昨夜作ったのはラムカレー。ラムには臭みがありまた脂も多いのでカレー専門店勤めではない私としては、吉と出るか凶と出るかの賭けでもあった。作り方もいつもは玉葱・じゃがいも・人参を適当に切って肉と共に炒めて煮込むだけだったのを、今回は玉葱は微塵切り、じゃがいもは微塵……にできなかったので仕方なく小さめのぶつ切り。これらをラムの肩ロースと炒めて煮込んだ。灰汁が普段よりも多く出て、煮込んでいる最中からラムの匂いが強くどうなることかと思ったけれど大成功! カレールーを投入するとラムの匂いがほんのりと薄れてカレーの匂いと絶妙なハーモニーを。今迄に作ってきたカレーは全て失敗作だったのではないかと思える程の美味。昨日はトーストと共に味見程度に食し、今日になってご飯と共に食べてみた。カレーはなんて美味いんだー! ジンギスカンのラムは焼き過ぎると固くなってしまうけれど、適度に炒めてから煮込んだラムは柔らかくなった。新発見。今度は是非ともラムシチューに挑戦してみたい所存。ブラウンルーを使えば絶対に美味しくできると確信している。また近所のスーパーで取り扱っているジンギスカン用のラム丸肉でもカレーを作ってみたい。本来なら私は四角く切られた肉よりも、牛でも豚でもへれへれの小間切れなどで作るカレーが好きなのだ。炒めるときに適度にバラせば、丸肉でもへれへれ肉同様のカレーができそうな気がする。

 食したことはないけれど、ラムしゃぶやラムのハンバーグなる料理もあるらしい。これらも試してみたい。生はともかく、煮てよし焼いてよし湯がいてよし、と肉料理の基本三拍子を備えたラム肉。何故日本では余り浸透しないのか。疑問でならない。臭みが苦手という人が多いようだが、秋刀魚の塩焼きなどの方がより臭みやえぐみがあるように思う。現在、多くの人にとって手近な羊料理といえば、ラムチョップのソテーとジンギスカンだろう。高級フレンチの店などを除き、あくまで庶民限定で話を進めるとこのふたつに明らかに偏っている。勿体無いことこの上ない。牛や豚の副産物として革が挙げられる。しかし革を取るには、食肉としての屠殺が前提だ。ラムやマトンに関して言えば、革だけでなく羊毛も取れてその後食肉としての屠殺にもできる。雑食動物である人間は、獣を食べる。ひとつの資源として捉える。ならば、資源の有効活用として羊の方が効率もよいのではなかろうか。BSE問題発覚から、私はひたすらに羊への世間の着目を望んでいる。しかしそれは実現しておらず、残念でならない。もっと多くの店で多種の羊肉を扱ってくれることを願ってやまない。羊は美味いのだ!

 都内某所に鯨料理専門店がある。また別の場所にはさくら肉専門店もある。それぞれとても美味しい料理を提供してくれる。特に鯨肉専門店に初めて行ったときには驚かされた。それ迄、鯨は刺身に限ると思っていたのだけれど、その店で出された鯨の唐揚の美味しかったことったらもう……。ここの唐揚の衣は一般的な鶏の唐揚の衣とは違い、小麦粉ではなく片栗粉を使っているらしい。自分でも作ってみたいところだけれど、如何せん鯨肉入手が難しい。価格もさることながら扱ってる店が少なすぎるのだ。鯨肉食反対の動きは当然知っている。そして鯨と海豚には厳密な区別がないことも知っている。そんなことはともかく、私は家で気軽に鯨を食したい。この鯨料理専門店から程近い場所に、羊料理専門店があった。かなり昔に行ったので今もあるかは判らない。ここでは羊肉の鉄板焼きが食べられた。香辛料を存分に使い、羊特有の臭みは殆ど感じられずただただ美味だった。また食べたい。或る店で、羊の餃子を食べた記憶がある。臭みが全く気にならないどころか却って好きな私にはとても美味しかった。この餃子は臭みが苦手な人には食べられたものではないかもしれない。豚肉で作られた餃子や肉まんに多くの人は、ジューシーさ、を求める。このジューシーと感じる要素は豚肉の脂であり、羊の脂とどう違うのか解らない。どちらの脂にも肉の臭みがある筈だ。程度問題なのか? いや、私は違う気がする。羊が余り好まれない理由に、冷めたときの不味さ、があると思われる。例えばお弁当。牛・豚・鶏は冷めて多少味が落ちても食べられる。羊の場合は脂の多くが白く浮いて非常に不味いものとなってしまう。これは敬遠される一要因ではなかろうか。わざわざ冷めた餃子を食べる人は少ないだろう。ところが肉まんとなると、コンビニで買って帰宅してから食べる人も多い。この場合、その肉まんは多少冷めていることになる。豚ならそれでも美味しく食べられる。羊なら……まあ、不味くなってしまっているだろう。

 羊にも鯨にも馬にも特有の臭みがあるという。けれど、ならば、牛や豚や鶏には臭みが全くないというのか。それは嘘だろう。確かに上記の動物に比べたら臭みは強いかもしれない。しかしそれらは所詮慣れの問題ではなかろうか。例えば羊肉をメインとする食文化圏があったとする。そこで牛・豚・鶏を出した場合、現在の日本人の多くとは逆に味気なさを感じられるかもしれない。少なくとも私は羊を食べた後に鶏を食べると、味気なく感じる。以前にも書いたことがあるように、私は焼肉よりもレバ刺やユッケの方が好きだったりする。牡蠣もフライより生の方が好きだ。特に貝殻に乗ったままの大きめの生牡蠣に紅葉卸を乗せ、レモンを絞ってちゅるんと食べる瞬間は至福。私と同じ食嗜好の人に未だかつて出会ったことがない。単に私が臭みのあるもの・えぐみのあるのが好きなだけなのだろうか。焼き魚でも白身部分にはこれっぽっちも魅力を感じず、無心に血合い部分ばかりを食べたりする。この血合いの話を何人かにしたことがある。皆かなり驚いていた。中には、血合い部分は残すもの、という人もいた。まるで私がゲテ食いのようではないか。失礼な。その分、他者が手を伸ばさないものを存分に食べられるということで得なのだろうか。いや、そんな得よりも私は気軽に羊や鯨を入手できる環境を望む。

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