12月2日記。

 先週末からうちのもネットオークションを楽しみ始めた。発端は、そろそろコートを新調したい、と言い出したことだ。うちのがこれ迄着ていたコートはかわいく暖かく丈夫と三拍子揃ったいい物なのだが、私と付き合い始める前から愛用している物であり、相当な年季が入っている。うちのの職場は年俸制であり、ボーナスなる臨時収入的存在はない。年俸÷12で月々にもらえる額が全てであり、因って使い方も慎重になる。ボーナス入ったからでかい買い物しちゃえ! とはならないのだ。そして私は散財大好き人間であり、うちのは財布紐キツキツ人間である。安い物をちびちびと買い集めた末、最終的にはそれなりの額に達してしまう、というのが私の散財パターン。うちのは違う。普段がケチケチなので使うときはどかんと使う。私と付き合い始める前、うちのはそれなりに衣類や服飾小物に気と金を使っていた。それが私という散財大好き人間と付属してきた小動物2匹を飼い始め、格段にランクを下げざるを得なくなった。鞄と靴だけはポーター・カンペールのレベルを保っていたが、服はHRMやBEAMSから無印やユニクロへ、1年前くらいからやっとARROWSへ……。限界に達したらしい。なんで一所懸命に稼ぎ毎年年俸も上げているのに自分の服は殆ど増えず、増えても安価な物ばかりで、なのにこいつの服や小物がやたらと増えているんだ? という感情もあっただろうと予測している。そしてその感情が湧いてくるのは当然だろう。うちのは私同様に新古には余り拘らない。品質と状態とデザインが気に入れば、中古の方がお得な場合も多々ある。近所で月に1度のペースでフリーマーケットが開催される。私がいろいろなところで覗いてきた所見では、どこのフリーマーケットも大差がない。レディース物は安くても品質や状態のいい物がそこそこ充実しており、メンズ物は往々にして高くて質も悪い物が殆どである。また定価並みの値段でのコピー品も横行していたりもする。そしてネットオークションへ。

 今迄ずっと我慢を重ねて堤防が崩壊したうちのは以前に懲りた経験を活かしてか、今月の予算は10万! とぶち上げた。予想以上の予算額にやや驚きはしたものの、豪気だねえ、漢だねえ、と私はほくほくした。予算額が高い程、選ぶ幅が広がるのだから当然だろう。うちでは既に、メンズ物をネットオークションで購入する際のシステムが確立されている。まずは私が画像や解説を元に選択し、その商品のURLをうちののPCに送り、その中からうちのが選んで商品毎に予算設定をしてメールを返送し、それを基に私がスナイプする。かなり前に仕事に着て行くシャツと普段着のトップス類を、うちのが欲しがったことがある。そのときは1品1品の予算が低かったのだが、私は特に問題が無いと思っていた。リサーチ不足故の大失敗ではなく、ひとつ賢くなったと思いたい。というのも、レディース物のオークションでは定価の1/10、1/20以下でも質のいい物やそれこそ新品迄出品されている。メンズ物も同じだと考えていたのだ。違った。落札したメンズ物は安価且つ粗悪な物が大半だった。私なら恥ずかしくて出品できないような、型崩れや破れのある物もあった。着用感、という言葉はメンズでは通用しないことを教わった。数点購入し、うちのはオークションでの衣類購入をやめた。懲りたのだ。碌な物が無いな、と。しかし今回コートを目当てに覗いてみたところ、予算を上げればいい物が多かったのだ。

 ネットオークションでは、その気になれば1日で100枚単位の衣類を見られる。足で捜し歩こうとしてもなかなかそうはいかない数だ。その利点と同時にリスクも付いてくる。実物が見られないので、以前のようにトンデモな物を買わされる可能性もあるのだ。なので私はオークションで高い買い物はしないし、そもそも自由になる金が少ないので無理なのだが、うちのは踏み切った。土日出勤も多いうちのは、気に入った物を捜し歩く時間が余りない。元々お洒落サンだったので10〜20代のうちに自分の好みや自分に似合う物を知った。お洒落サンではあるが、比較的無難な物を好むタイプである。無難な中にちょっとした拘りがある物が一番好きらしい。また先日からのオークション探索で判ったことがある。ジャストサイズの衣類を好むということだ。私は肩幅・着丈などが自分のサイズよりも小さくなければ着方次第でどうにかなるだろう、という考えの持ち主だが、うちのは違った。余りにも寸法に拘るので私が、デザインによってはルーズな着方でもいいじゃない、と助言したら激しく抵抗された。ファッションへの冒険心が旺盛だった頃に、ルーズフィットの服で失敗したことが何度もあるそうだ。ジャストサイズへの強い拘りは、二方向で良い効果を齎した。ひとつは膨大な数の衣類の中から選択し易くなったこと。もうひとつはルーズフィットを好む私と兼用できそうな物が多くなったこと。私も小柄だが、うちのも男性にしてはやや小柄なのだ。なので私が買ったルーズフィットの衣類をうちのが着ることもある。そしてうちのは渋い物よりもややかわいい物を好むので、私も兼用で着させてもらえそうな物もあり嬉しい。最も大変な第1選択を任されていることと、出品者との遣り取りや振込全てを私がこなしていることの恩恵か。かわいい、面白い、など物事への感想の持ち方が似ているのは、恋人同士や夫婦にとって大切なことのひとつだと思う。先日書いた本棚の話にも繋がる。好みが似ているとはいえ、全く同じではない。そのずれた部分から、お互いの趣味や好みの幅が広がっていくのはいいことだ。

 今回の落札品の中、鞄やトップス類の中では私が使えそうな物もある。その中のひとつに、私がどうしても欲しくて即決入札を強力に勧めた物がある。勿論、うちのの好みを知った上で勧め、本人も気に入った上での入札・落札である。うちのの服として購入したからには、その服への主導権はうちのが持つに決まっている。うちのが着たいと言えば、その日に私は着られない。それでも構わない。うちのの職場はスーツ着用の必要は無いものの、平日出勤時は、基本的にジャケット・シャツ・パンツである。即決してもらった物は普段着だ。ということは、自然うちのは土日にしか着られない。平日にのみ受けられる恩恵だが十分だ。こう書いていると平日に着倒す予定のようだが、入浴意欲の薄い私は余り着替えないので問題ない。いや、入浴しない点に問題はあるが。さて、明日は久々にライヴに行く。会ったことのないネット上の友人と共に行くことになっている。今日は絶対に入浴しなければならない。と書いていて思い出した。明日届く予定のゆうパックでの配達物。午前中や昼間は寝ていることも多いので、いつもの癖で時間指定を夜間にしてしまった。失敗。予定が書き込まれたカレンダーを見つつ時間指定することを学習したことにしよう。尤もコート類などの大きく重いものでない限り、私はリスク承知で安価な定形外発送を頼むので、滅多にこんな失敗は無いのだが。

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