現在9日早朝。

 うちには滅多に人がこない。狭いし汚いし小動物と煙草の混ざった匂いがするしで呼びにくいのだ。また友人たちには家が遠い者が多いというのもある。そんな我が家に珍しく昨日、友人がきてくれた。その友人が奇特な趣味があると言うので、その趣味の実行のためにきたのだ。奇特な趣味とは、とことん汚れた場所を徹底的に綺麗にすることだという。持つべきものは友人である。きてもらい、玄関のドアの内側・ユニットバスのドアの内外・冷蔵庫などの拭き掃除をしてくれた。彼女は拭くことが好きなようだ。拭こうとしている場所に洗剤を拭きかけると、汚れが溶け出す。茶色? 黒? ドドメ色? どう表現すべきだろう……汚い。コレだ。とにかく汚い色となって洗剤が垂れ、それを彼女が拭いていく。一度ではムラになるので何度も拭く。そして激しく綺麗になった。そうか、元はこんな色のドアだったのか、と感心しきりである。彼女が掃除してくれている間、私はぼんやりとしていた。お前も違うところを掃除しろよ! と言う声が聞こえてきそうだが実際には聞こえてこなかったのでしていない。彼女が掃除している姿をくだらない話をしつつ、凄いなあ、偉いなあ、と眺めていた。一昨日辺りから過眠期に突入した気配がありやや眠かったが、流石に友人に掃除をさせておいて自分は寝てしまう訳にはいかないので、頑張って起きていた。彼女は自分の趣味の為にきてくれたのであり、徹底的に全箇所の掃除をする為にきてくれたのではないので、彼女が疲れたら終わりである。それでも十分綺麗になった。本当に有難う。

 後はお茶を飲みつつ、雑誌を捲りつつ喋っていた。その中で彼女がピンク系メイクが似合わないというようなことを言った。人は自分が誰かに有難いことをしてもらったら、相手にお礼をしたくなるものだろう。そして私はその点に於いては常識的人間であり、メイクは趣味兼特技である。私のメイクボックス・メイク用品の入ったバニティポーチ・メイクブラシ収納ケースをばーっと広げた時点で眠気はかなり去った。私のシャドウ類を並べ彼女に使ってみたい色を選んでもらった。そのシャドウをメインにメイク開始。一手順ごとに説明をし、鏡で確認してもらいながらの作業。

 ファンデはしているというので、マスカラを残して精製水でアイメイクを落とす。それからエスティローダーのシャドウベース→スティラのストロベリーダイキリをアイホールに広げる→マジョリカマジョルカの赤ライナーを目尻寄り1/3に引き微妙に跳ね上げる→ライナーの上と奥二重の範囲にFSPのゴーハッピーを薄めに乗せる→同じくゴーハッピーを下瞼にも薄く入れる。マスカラは元々黒マスカラをしていたので、遊び心として睫の毛先にのみ軽くガリュの偏光パープルマスカラをつける。眉にもニュアンスを付ける為にケサランパサランのボールドーフェイスカラーを乗せ、簡単に落ちないようにアイブロウコートを付ける。チークを入れていないと言うので、ピエヌの真っ赤な水チークを暈し、その上にパラドゥのパール入りの薄ピンクフェイスカラーを重ねる。立体感をつける為にスティラのバナナダイキリの一番淡い色と中間色を指で混ぜてノーズシャドウを入れ、イプサのフェイスカラーでシェーディング。唇や肌が香料で荒れ易いと言うので、パラドゥのラメ入りリップケアグロスを付けて終了。

 私は自分が作った彼女の顔の出来栄えに相当な満足感を得られた。彼女は鏡を見つつ、いつもと雰囲気の違う顔になった自分に照れくさそうな表情を浮かべていた。かわいい。輪郭を覆うように髪を下ろしていたので、ピンク系のピン2本で髪を留めてみた。当然そのピンはプレゼントさせてもらった。服も暖色系や大胆な柄物が苦手だと前から言っていたので、私の持っているピンクのパンツを穿かせたり、和柄のピーチピンクのコートを着せてみた。うん、似合う。彼女も満更ではなさそうだった。今回はピンク系の楽しさが解ってもらえたようで、私も嬉しかった。彼女の得意なメイクはグリーン系、衣類はモノトーンである。今度はブルー系メイク、もっと大胆な色使い・柄使いの服の楽しさを知って欲しい。他者からアドバイスや意見をもらうのが好きなのと同様に、私から他者にアドバイスや意見をするのも好きなのだ。その為にはもっといろいろ知識と技術を身に付けなければ、とも思った。

 彼女の帰宅後、私はすぐに眠りに落ち深夜に目覚めた。彼女からメールがきていた。彼氏にメイクを見せたところ「血色がよくなった」との意見をもらい、ヘアピンは好評だったらしい。彼女は彼氏に言われたメイクの感想にやや不満を感じたようだ。しかし施した私からすれば褒め言葉である。撮影やパーティではなく普段するピンクメイクの目標は、湯上り美人、なのだ。湯上りということは血色も良くなっている訳なので、彼の意見は的を射ている。前に書いた内面と外見の近付けを試みている友人とは彼女である。昨日の帰り道、早速ピンクシャドウを購入したと書いてあった。彼女の根っこはとても優しい人間である。昨日うちに来てくれたのも趣味である掃除半分、精神的に参っている私への心配半分だっただろうことは想像に難くない。彼女は照れ屋なので心配しているなどとは言わない。けれど態度で判る。私には彼女の気遣いが凄く嬉しかった。今の私には彼女への恩返しはそうそうできそうにない。昨日伝授したピンクメイクで、きつく見えがちな彼女の内面の優しさを他者にも認識してもらえたらと願える程度である。次はブルー系メイクで凛とした彼女の魅力を引き出したい。

 今朝から明日か明後日まで帰省の為、日記はお休み。

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