先日、一番の仲良しと話していて、私らの読むファッション誌がないという話題になった。彼女と私のファッション傾向は違うが共に無いのだ。歳相応の雑誌をめくると箆棒に価格が高い物しか掲載されておらず、歳以下の雑誌をめくると若過ぎて似合わない物が多い。そもそも両誌共に趣味に合わない。私は強いて選んでmini・nonnoなのだ。もっと役立つ雑誌が存在すれば当然移行する。どこかかが発刊してくれないものか。いっそ自分でどこかに企画書を持ち込んで社会復帰の足掛かりにするかとも思った。が、やめた。服に限った話では無いが、人の趣味とは多種多様である。私が企画書を持ち込み運良く発刊に至ったところで、私と同傾向のファッションを好む同志がどれほどいるかの数字が読めない。彼女と私の間では、読むファッション誌がないということは共通認識としてあるが、きっと彼女は私が企画した雑誌は読まないであろう。趣味が違うからだ。こうなるとひとりに一誌と云う話になる。無理だ。なのでやめた。追記するならアナスイのレザースーツとタバサのワンピースとサマンサモスモスのブラウスを同列に扱いたいという雑誌に広告費を出す企業はまずなかろう。

 女性にとってファッションと切り離せないのがメイクである。私の初メイクは実に乱暴で酷いものであった。中学時代の友人にメイクを教わらされてやってみたのを今も覚えている。スキンケアもしていない頃だった。中学生で貧乏だったのでチープセルフコスメ、メイベリンのリキッドファンデーションと口紅を買った。当時はその友人の知識に基づいてのみのメイクだったので、下地も何も付けずにファンデーションを塗りたくり紅を引いた。なかなかいいかも? と思った。今となっては美意識の欠片も無かった自分が恐ろしい。ファンデーションで能面のように立体感を無くし、口だけが激しくピンクの何がいいものか! 元来不精な私はそれ以来口紅だけを愛用していた。リキッドファンデは付けるのが面倒だったからだ。唇が荒れ易く紅を引く前に必ずリップクリームを付けていたのは偶然の産物であるが、今も唇への色素沈着は余り無い。高校生になり彼氏が出来てから自ら進んでコスメを購入した。PJラピスのリップとネイル、エルセリエのプレストパウダー等。スキンケアもするようになった。しかし知識無く自己流なので化粧水のみであり、乳液で蓋をする必然性など知る由もない。

 19歳になり、就職活動の為にメイク用品一式をイプサで揃えた。化粧液の容器が化学室にある薬剤瓶のような形だったのを気に入ったからだ。メイク用品と同時にその化粧液も購入した。化粧液が1本で化粧水と乳液の役割をしてくれる手軽さやフェイスカラーがアイシャドウとチークを兼ねる便利さも気に入ったし、そのとき担当してくれたイプサのBAさん自身の顔も名前も覚えていないが、その親切さには今も感謝している。彼女が私を適当にあしらうBAなら今の私はない。彼女に正しいメイクを教わってからも転々とした職場がどこも男社会だったこともあり、メイク自体は余りしなかった。ホステスやM嬢をしていた時代も余りメイクはしなかった。濃い目の紅を引いてさえいれば男性はきちんとメイクしているかのように勘違いしてくれたからフルメイクの必然性を感じなかったのだ。男も莫迦だ。

 今の私は自他共に認めるコスメオタクである。基礎物・メイク物何でもござれだ。フルメイクには2時間を要する。スキンケアもメイクも楽しい。その楽しさを教えてくれたのは某巨大掲示板の化粧板である。某巨大コスメクチコミサイトはその後に知った。クチコミサイトが先ならもしかしたらコスメが嫌いになっていた可能性もある。あちらでは何でもござれにはなれなかっただろう。餓鬼のポエムにげんなりしていたに違いない。先に某巨大掲示板を知ったことは本当にラッキーだった。何でもござれの知識の殆どは化粧板で得た。各アイテムの用途から必要性、各コスメブランドの特徴、ブランドの撤退や新生及び限定商品やコフレの情報、裏技的な物事等。そして大高姐さんの存在もブラシの選び方も自分がブルーベースであることも。ブルーベースだと判定してくれたのはカバーマークだが、そもそもカラーベースというものの存在を知らなかったのだ。カラーベースを知ったことでファッションもメイクも失敗アイテムの購入が確実に減っている。私のコスメ知識の9割8分は化粧板のお陰であり、残りの2分がVoce・美的と某クチコミサイトだ。

 限定商品にときめく。これは衣類小物等のアンティーク物や一点物好きにも通じる。同じ物を多くの人間が使っているという現象が嫌なのだ。その反面、祭も好きでマジョリカマジョルカの赤ライナー祭に乗ったりもする。FSP各アイテムも然り。そんな限定や新色に煽られる莫迦の敵の二大巨頭がスティラとランコムだろう。毎月のように限定色や限定商品を出してくる。一時期、私はスティラに貢ぐ為に働いているのではないかと思っていた。けれど貢ぎたくてたまらなかった。うちのには散々莫迦にされた。一歩立ち止まった今は確かに莫迦だったことを素直に認められる。ファッションブランドとコスメブランドに変わりは無いのだと目が覚めた。ファッションブランドはシーズンごとに様々なアイテムを出してくる。翌年の同シーズンに同じ物を出してはこない。言ってしまえばファッション業界では、そのブランドの定番商品を除く全てが限定品なのだ。何故コスメブランドではそれが特化されてしまっているのだろうか。コスメの色物は季節に適した色はありつつも基本的には通年使える物だからだろう。以前、スティラの限定、カバナガールシリーズのバナナダイキリとストロベリーダイキリを購入した。そのバナナダイキリを使ったときに気付いた。スティラの限定品パッケージは基本的にとても可愛い。しかしカバナガールシリーズは三種のトライパンが出されたが、三種とも同じパッケージだった。可愛いには可愛いが使う際にストロベリーダイキリと間違えてしまう。そしてスティラのシャドウは質も色も悪くはないが特別良くもない。バナナダイキリはベージュからブラウンの三色のアイシャドウで成り立っている。探せば何処かのブランドに同じ色はありそうで、そちらの方が質も良いかもしれない。私は化粧直しの際にアイシャドウは弄らないのでトライパンを持ち歩くことはない。可愛いパッケージは自己満足である。しかし他色との区別がし難くては魅力は半減する。やっと理性を取り戻した。

 イプサ・FSPのシンプルさ、アユーラの素朴さ、A&A・白鳳堂の機能性と安定感、ランコムのアダルトな雰囲気、アナスイのデコラティブな雰囲気が好きだ。スティラの可愛さも変わらず好きだ。しかしもう限定や新色に踊らされはしまい。既に私のメイクボックスに足りない物は無い。後は適度に楽しむだけである。この秋は上記赤ライナー、ランコムの限定リップ&チークスとやはり限定色のチーク、アナスイの新色リップジャーを買っただけだ。アナスイのリップジャーは5000円以上購入時の特典であるバニティポーチ目当てに、前々から欲しかったリップブラシ2本だけではポーチプレゼントへの価格に達しない為に購入した。まだ冷静さを取り戻し切ってはいないのかもしれない。が、楽しいから良いのだ。

BGM/アルバム「無罪モラトリアム」「加爾基 精液 栗ノ花」

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